2025.06.26 発行
◆リサイクル:セントラル硝子プロダクツが太陽光パネルカバーガラスの水平リサイクルを開始(6月20日)
◆ゴム:住友ゴム工業が3Dプリンターでも作れるゴム材料を開発(6月19日)
◆天然ガス:出光興産がマレーシアでの油ガス田探鉱開発事業に参入(6月19日)
◆リサイクル:BASFジャパン、興人フィルム&ケミカルズ、TOPPAN、J-オイルミルズがリサイクル原料を用いて製造した
ポリアミドから食用油向け業務用容器の開発に向けた協業を開始(6月19日)
◆包装材料:大日本印刷が透明性と吸湿性を兼ね備えた医薬品包装向けPTP用樹脂シートの開発を発表(6月19日)
◆フィルム:大日本印刷が2,500mm幅対応のコーティング装置の稼働により生産能力を15%以上向上(6月18日)
◆複合材料:日本電気硝子が連結子会社であるElectric Glass Fiber UKの事業活動の停止を発表(6月18日)
◆リサイクル:JX金属が金属・リサイクル事業の収益力強化に向けた方向性について検討を開始(6月17日)
◆ガラス:日本板硝子が省エネガラス向けコーティング設備の国内生産能力を増強(6月16日)
◆電子材料:ノリタケが自動車向けパワー半導体用の銀ペースト接合材を開発(6月16日)
◆CO2対策:住友大阪セメントがCO2再資源化の実証設備を栃木工場に新設(6月16日)
◆価格改定
・クラレが活性炭および関連製品(活性炭繊維や不織布、浄水器用の成型体など)を7月1日出荷分より値上げ
・レゾナックが次亜塩素酸ソーダを7月18日納入分より値上げ
・サカタインクスがパッケージ印刷用インキ・ニスを7月20日出荷分より値上げ
◆リサイクル:セントラル硝子プロダクツが太陽光パネルカバーガラスの水平リサイクルを開始(6月20日)
セントラル硝子グループのセントラル硝子プロダクツ(以下、CGP)は、株式会社浜田(大阪府)にてホットナイフ式で分離・回収された使用済み太陽光パネルのカバーガラス20トンを原料の一部とした網入り磨き板ガラスの試験生産に成功し、6月より継続的な水平リサイクルを開始したと発表した。
これまで、カバーガラスの板ガラス向けリサイクルは、品質要件が厳しく実用化は困難とされてきたが、CGPにおける成分分析とガラス溶解窯の操業管理の精度向上および投入量の最適制御により、継続的な実用化に成功した。
日本国内において、耐用年数を経過した太陽光パネルの廃棄量は、2030年以降年間数十万トンに達すると見込まれ、これらの廃棄処分には深刻な環境負荷が懸念されている。太陽光パネルの約6割はカバーガラスが占めていることから、CGPがこれらを継続的にリサイクルしていくことで廃棄物の削減に貢献する。CGPは、2025年度のリサイクル量を300トンと想定しており、今後カバーガラスの回収拠点を増やし、より多くのリサイクルを推進するとしている。
◆ゴム:住友ゴム工業が3Dプリンターでも作れるゴム材料を開発(6月19日)
住友ゴム工業は、自社の「ゴム・解析技術」を活かし、3Dプリンターで加工できるゴム材料を開発したことを発表した。
これまでの3Dプリンターでは、ゴムライク製品(ゴムのような柔軟性と弾力性を持つ樹脂製品)を作ることができたが、ゴムと比較して復元性や耐久性に課題があった。そこで同社は、ゴムの配合・内部構造分析のノウハウを駆使し、ゴム本来の弾性、復元性、耐久性を持つ3Dプリンター用のゴム材料の開発に成功した。3Dプリンターで主に使われる樹脂(プラスチック)ではつくれなかった弾力性、耐衝撃性、柔軟で滑りにくい等ゴムの特性を活かした製品をつくれるようになり、ロボットハンドの指部分や医療訓練用の臓器シミュレーションモデル等など、ロボット、医療、自動車、スポーツ等様々な分野での活用が期待できる。
同社では、3Dプリンター造形用ゴム材料事業の2026年中の実用化を目指して研究・開発をさらに進めていくとしている。
◆天然ガス:出光興産がマレーシアでの油ガス田探鉱開発事業に参入(6月19日)
出光興産は、マレーシア・サラワク州沖合に位置する2鉱区の権益を、韓国のSK earthon社から取得したことを発表した。
当該鉱区に関する生産物分与契約を、マレーシアの国営石油会社であるPetroliam Nasional Berhad(PETRONAS)社、サラワク州営石油・ガス会社のPetroleum Sarawak Exploration and Production社、SK earthon社との4社間で締結した。同社が取得した当該鉱区の権益は40%であり、生産物分与契約の締結により、当該鉱区における40%分の石油および天然ガスの探鉱・開発・生産権を有することになる。
同社は現在、ベトナムとノルウェーを主要拠点として油ガス田探鉱開発事業を手掛けている。マレーシア・サラワク州沖合では、過去複数の油ガス田が発見されており、今回の権益取得は新たな拠点構築の足掛かりになると期待している。当該鉱区では、2023年の地下探査データにおいて複数の有望構造が抽出されており、試掘井の掘削を通して開発移行に向けた検討を進めていくとしている。
◆リサイクル:BASFジャパン、興人フィルム&ケミカルズ、TOPPAN、J-オイルミルズがリサイクル原料を用いて製造したポリアミドから食用油向け業務用容器の開発に向けた協業を開始(6月19日)
BASFジャパン、興人フィルム&ケミカルズ、TOPPAN、J-オイルミルズの4社は、ケミカルリサイクルポリアミドを用いた日本初の食用油向け業務用容器BIB(バッグインボックス)の開発に関し、協業を開始したことを発表した。
この取り組みにおいては、ケミカルリサイクルにより使用済み混合プラスチックを基礎原料に変換し、ポリアミドの生産の初期段階に投入することで、本来必要な化石原料を置き換える。ケミカルリサイクルされた製品は、例えば食品接触の要件を満たすなど、従来の製品と同等の性能を備えている。本協業において、まずは2026年3月までに、日本初である、ケミカルリサイクルされた素材を活用した食用油向けBIBの供給に向けたスキームを確立する。
本プロジェクトでは、先ずBASFがマスバランス・アプローチに基づきケミカルリサイクルしたポリアミドを生産する。興人フィルム&ケミカルズがこのリサイクル原料を配合したポリアミドフィルムを製膜、TOPPANが容器を製造する。その後、J-オイルミルズがBIBの強度と中身品質の担保など包材設計と検証を行う。
今後4社は、ケミカルリサイクルおよび精製技術を活用し、ポリアミドを用いた複合包材の水平リサイクルを含む循環型モデルの実現を目指すとしている。
◆包装材料:大日本印刷が透明性と吸湿性を兼ね備えた医薬品包装向けPTP用樹脂シートの開発を発表(6月19日)
大日本印刷(以下、DNP)は、口の中で溶ける医薬品である口腔内崩壊錠のような水分を嫌う製剤に対し、流通・販売時等の水分・湿気による品質低下を防ぐ乾燥剤が不要なPTP(Press Through Package)用樹脂シートを開発したことを発表した。
今回開発したPTP用樹脂シートは、4g/㎡の吸湿性能を備え、シート内の残存水分を吸収する。この性能により、水分・湿気による品質の低下が懸念される製剤の品質を保持できる。また、吸湿材料を使用しても高い透明性を維持しているため、内容物の視認性が損なわれない。パッケージ内部が見えないアルミブリスターと比べて製剤の確認が容易となり、誤飲の防止や、利便性・安全性の向上に繋がる。さらに、従来のシートに吸湿機能を付与でき、パッケージ外部から透過してくる水蒸気も吸収し、シート全体の防湿性が向上する。また、シートのベースとなる基材には、製品の特性に応じて、リサイクルしやすいPP(ポリプロピレン)とPVC(ポリ塩化ビニル)を選定可能である。
DNPは、同製品を2030年度までに年間3億円の売上を目指すとしている。
◆フィルム:大日本印刷が2,500mm幅対応のコーティング装置の稼働により生産能力を15%以上向上(6月18日)
大日本印刷(以下、DNP)は、2025年9月に三原工場(広島県)で、2,500mm幅の光学機能性フィルムのコーティング装置の稼働を開始することを発表した。
同社は、市場や顧客企業のニーズに対応して、2台目となる広幅コーティング装置を稼働させ、従来と比較して生産能力は面積ベース15%以上向上させる。
稼働開始する光学機能性フィルム生産ラインでは、世界的に需要が増加している65インチ(ヨコ1436.4mm×タテ809.0mm)の大型テレビ向けの光学機能性フィルムを効率良く生産(面付け)することが可能である。また、テレビのハイエンドモデルのニーズに対応すべく、インライン多層コーティングができる設計になっており、単層コーティングの製品よりも映り込む光の反射を抑制し、視認性を向上させる。
DNPは、2,500mm幅対応のコーティング装置の稼働開始によって、中国など各国・地域の偏光板メーカーへ光学機能性フィルムの提供を拡大し、2026年度に年間約1,100億円の売上を目指すとしている。
◆複合材料:日本電気硝子が連結子会社であるElectric Glass Fiber UKの事業活動の停止を発表(6月18日)
日本電気硝子は、イギリスの連結子会社で樹脂強化用ガラス繊維の製造・販売を行っているElectric Glass Fiber UK(以下、EGFU)の事業活動を停止することを発表した。
日本電気硝子はこれまで、EGFUの売却や戦略的パートナーシップの形成、事業活動の停止などの様々な可能性について約2か月半模索してきたが、グループの複合材事業の早期立て直しを図るためには EGFU の事業活動を停止し清算することが最善の策と判断した。グループの複合材事業の収益改善に向けては、生産体制の再構築、製品ポートフォリオの変更、生産効率の向上、高付加価値製品の開発・拡販等を進めていく。
日本電気硝子は、2025年6月下旬にはEGFUでの生産を停止し、債権債務の整理を進め、清算に向けた準備を行っていくとしている。
◆リサイクル:JX金属が金属・リサイクル事業の収益力強化に向けた方向性について検討を開始(6月17日)
JX金属は、近年の精鉱製錬における収益性低下を踏まえ、精錬所において減産措置を実施する方向で検討を開始したことを発表した。また、半導体材料など先端材料の原料確保のニーズが高まっている状況と、循環経済に関する意識の高まりに対応するべく、精鉱製錬からリサイクル製錬への事業構造の転換を一層加速させ、生産規模縮小を視野に入れた生産体制や事業体制の変更に関する検討を進めることを併せて発表した。
同社は、金属・リサイクル事業について、半導体材料事業、情報通信材料事業などのフォーカス事業で使用する原料の供給を主たる目的と位置付けている。銅については、フォーカス事業での必要量と比して多大な生産能力を有している一方、主にリサイクル原料から回収される貴金属、レアメタルについては、フォーカス事業で具体的な需要があることに加え、産出国からの供給リスクも増大しており、リサイクルのウェイトを高めることで、フォーカス事業のサプライチェーンをより強固なものとし、同社グループ全体の収益性、効率性を向上させる。また、銅の安定供給には資源循環の促進が欠かせないことから、生産規模最適化などによる製錬所の競争力強化は、銅・レアメタルの回収拠点維持という観点からも重要であるとしている。
◆ガラス:日本板硝子が省エネガラス向けコーティング設備の国内生産能力を増強(6月16日)
日本板硝子は、千葉事業所に最新鋭のスパッタリングコーティング設備を導入し、省エネ性能の高いLow-Eガラスの生産能力の増強を計画していることを発表した。
近年、脱炭素化に向けた政府の省エネ施策が進む中、より省エネ効果の高いLow-E複層ガラスの需要拡大が見込まれている。Low-Eガラスは、ガラス表面に透明金属膜をコーティングし、建物内外の熱の透過を防ぐ省エネガラスであり、国内新築住宅におけるLow-E複層ガラスの普及率は年々上昇傾向にある。
同社はこれまで日本国内においては、大半のLow-Eガラスをグループ内外から外部調達してLow-E複層ガラスを生産していたが、今後も高い需要が継続的に見込まれるとともに、商業ビルなどの非住宅分野や既存建築物のリフォーム市場などへも更なる採用拡大が見込まれることを踏まえ、本格的な国内生産に向けた投資を行うこととした。本設備の稼働は2026年4-6月期、量産開始は同年7-9月期の予定としている。
◆電子材料:ノリタケが自動車向けパワー半導体用の銀ペースト接合材を開発(6月16日)
ノリタケは、韓国のLG Chem(以下、LG化学)と共同で、自動車向けパワー半導体用の接合材を開発したことを発表した。
自動車のEV化や電装化が進む中、パワー半導体モジュールの採用が増加傾向にある。半導体モジュールでは、従来、半導体チップと銅板をはんだペーストで接合させていたが、パワー半導体は動作時に高温になり、はんだペーストでは耐熱性に課題があった。そのため、銀ペーストなどの耐熱温度が高い接合材が求められていた。一方、銀ペーストは耐熱性が高いが、接合する際の加熱温度 (=接合温度) が高くなる傾向にあり、接合する部品の劣化を防ぐために接合温度を下げる必要がある。近年、銀のナノ粒子を材料として使用することで接合温度の低温化が試みられているが、ナノ粒子を使用する場合、安定した品質を保つには冷凍保管 (-10℃以下) が必要となっている。また、一般的な使用期限は約3カ月で、使用期限を延ばすことも課題である。
同製品は、ノリタケの粒子分散技術とLG化学の粒子設計技術により、最適な組成を設計してペースト化することで、25℃以下での長期常温保管を達成した。使用期限が約6か月になり、接合材としての性能を損なうことなく、保管に関する課題を解決したとしている。
◆CO2対策:住友大阪セメントがCO2再資源化の実証設備を栃木工場に新設(6月16日)
住友大阪セメントは、「NEDOグリーンイノベーショ ン基金事業 CO2再資源化人工石灰石パイロットスケール試験設備」を栃木工場の敷地内にて構築し、竣工したことを発表した。
同社はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクトの一環である「多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立」において実用化に向けた研究開発に取り組んでいる。この取り組みでは、CO2とカルシウムを反応させ、CO2を鉱物固定化することでCO2再資源化人工石灰石を生成する技術と、セメント・コンクリート分野など様々な分野でCO2再資源化人工石灰石を活用する技術の開発を行っている。
新設された設備は、これまでの人工石灰石製造のベンチスケール試験で得られた研究成果を、より大規模な環境で技術検証し、将来の実スケールプラントの設計に向けた知見を得ることを目的として構築された。同設備は、既存のベンチスケール試験設備(大阪市)の約10倍の生産能力(約270t/年)を有すると共に「セメント工場から発生した実ガスを使用」、「一般焼却灰など多様な廃棄物からカルシウムの抽出が可能」などの特徴があるとしている。
◆価格改定
・クラレが活性炭および関連製品(活性炭繊維や不織布、浄水器用の成型体など)を7月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、20~40%
・レゾナックが次亜塩素酸ソーダを7月18日納入分より値上げ
値上げ幅は、9円/kg以上
・サカタインクスがパッケージ印刷用インキ・ニスを7月20日出荷分より値上げ
値上げ幅は、水性フレキソインキ・ニス製品全般 :10%以上
一部溶剤性インキ・ニス:10%以上