2025.12.04 発行
◆半導体材料:東レが半導体ウェハの薄膜化に対応した新規仮貼り材料を開発(11月27日)
◆非鉄金属:古河電気工業が低ヤング率耐熱無酸素銅「TOFC」を開発(11月27日)
◆会社設立:日本化学工業がTDKとの材料開発に関する合弁会社の設立を検討開始(11月27日)
◆脱炭素:ノリタケが高温排ガス向けCO2回収材を開発(11月26日)
◆水素:ニチアスが浜松研究所に液化水素の関連製品開発のための液化水素実験棟を新設(11月26日)
◆半導体材料:富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズが静岡工場内に先端半導体材料の新棟を竣工(11月25日)
◆導電性ポリマー:デンカが次世代エレクトロニクス分野の事業拡大に向けてスタートアップへ出資(11月25日)
◆価格改定
・東洋インキが油性オフセットインキ・UVインキを2026年1月1日出荷分より値上げ
◆半導体材料:東レが半導体ウェハの薄膜化に対応した新規仮貼り材料を開発(11月27日)
東レは、AI半導体に用いられる次世代高帯域幅メモリ(HBM)、SSDなどに用いられるNAND型フラッシュメモリ、xEVや産業機器に用いられるパワー半導体など、最薄で厚さ30μm以下の超薄膜半導体チップの製造に必要な半導体後工程材料を新たに開発し、サンプルワークを開始したことを発表した。
AI・高速通信の拡大に伴い、世界全体のデータ生成量は増加している。これらの膨大なデータを処理する半導体の性能向上が求められている中、さらなる処理能力の向上を図るには、半導体チップの積層数を増加しつつ半導体チップをより薄型化することが必要となっている。また、パワー半導体では、低消費電力化や応答速度向上のため、薄型化が求められている。
東レは、ポリイミドをベースに半導体・ディスプレイ向けの仮貼り材料を開発・量産しており、今回、バックグラインド工程向けの仮貼り材料として、同材料を新たに設計・開発した。同材料は、バックグラインド工程中の半導体プロセス材料の変形を抑制し、ウェハにかかる圧力が均等化することで、薄化後のウェハのTTV(Total Thickness Variation)を1.0μm未満に抑えることに成功した。
今後は、既存の量産インフラを活用して量産体制を整え、2028年までの量産化を目指すとしている。
◆非鉄金属:古河電気工業が低ヤング率耐熱無酸素銅「TOFC」を開発(11月27日)
古河電気工業は、一般的な無酸素銅よりヤング率が低く、高い耐熱性と熱伝導性を特長とする低ヤング率耐熱無酸素銅「TOFC」を開発したことを発表した。
次世代パワー半導体モジュールでは、高出力・高性能化に伴い発熱量が増大している。無酸素銅は、その優れた熱伝導性から、放熱基板や端子としてモジュールに搭載されている。しかし、はんだ付けや樹脂との接合時には熱が加わることにより、無酸素銅の軟化や反りの発生が接合信頼性を低下させる。また、モジュール内の半導体チップ、セラミックス、樹脂と銅との熱膨張係数が異なることから、部材間の接合界面での剥離や割れの発生が課題となっている。
同社は既存の耐熱無酸素銅GOFCの量産に加え、新たにTOFCをラインアップに加えた。TOFCは300℃以上の高温でも硬さを維持し、反りや変形の抑制が期待される。さらに600℃以下の領域において一般的な無酸素銅より低ヤング率を保っている。こうした特性により、パワー半導体モジュールの放熱板や端子、耐熱性が要求される大電流用バスバーへ適用することで、再生可能エネルギーのインバータ用途やxEVのパワーコントロールユニット等への展開も期待される。同製品は2025年度中に量産・販売を開始する予定としている。
◆会社設立:日本化学工業がTDKとの材料開発に関する合弁会社の設立を検討開始(11月27日)
日本化学工業は、TDKと積層セラミックチップコンデンサ(MLCC)向け材料などの電子部品材料および製造プロセスの開発等に係る合弁会社の設立について検討を開始する旨の基本合意書を締結したと発表した。
日本化学工業は無機化学品を注力に、電子材料や有機化学品を製造販売している。TDKは磁性材料をベースに電子機器の受動部品やセンサ、バッテリーを生産している。
両社の技術力と開発・評価ノウハウを結集して研究開発のスピードを加速し、試作・評価から市場投入までのリードタイム短縮を図ることにより、顧客ニーズに迅速に応える体制の構築を目指す。今後、当該基本合意書に基づき、合弁会社設立へ向けた検討を進めていくとしている。
◆脱炭素:ノリタケが高温排ガス向けCO2回収材を開発(11月26日)
ノリタケは、インドの科学産業研究機構 国立学際的科学技術研究所(CSIR-NIIST)と共同で工場排ガス向けCO2回収材を開発したと発表した。
カーボンニュートラルの実現に向けてCO2回収技術への注目が高まる中、工場などの産業施設からの高温の排ガスには高濃度のCO2を含まれており効率的な回収が求められている。代表的な回収法の一つに、CO2を吸収する機能を持つアミン液を用いた方法がある。アミン液は、約100℃でCO2を脱離するため、高温環境では使用が困難で、300℃以上になることが多い工場の排ガスを回収する場合、温度を下げる必要があり、この冷却工程がエネルギーコスト増につながるという課題があった。
ノリタケとCSIR-NIISTは、高温に耐えるセラミックスと独自の添加物を組み合わせ、排ガスを冷却せずにCO2を回収できる材料を開発した。本開発品は300~400℃で排出される工場排ガスを冷却せずCO2を回収することが可能であり、また、CO2濃度が20%以上であれば単位質量あたりのCO2回収量が現行の回収方法と同等、50%以上では2.5倍以上となる。両者は本開発品に対する実証試験を進めるとしている。
◆水素:ニチアスが浜松研究所に液化水素の関連製品開発のための液化水素実験棟を新設(11月26日)
ニチアスは、自社で液化水素実験を行える液化水素実験棟を浜松研究所に新設することを発表した。
カーボンニュートラル実現に向けてCO2排出量の低減策として水素が注目されており、水素キャリアとして液化水素、アンモニア、MCHなどが有力視されている。液化水素は気体に比べ体積を1/800に圧縮することができ効率的な輸送・貯蔵が期待されている反面、液化温度が-253℃と極めて低く、液化温度の維持や設備の大型化に技術課題がある。
同社はこれまで断熱材やシール材を産業分野に広く提供しており、その技術を基に、液化水素市場向け製品の開発を計画している。一方で、国内にはその開発のために液化水素の実液を使える試験環境は十分に整備されていない。そのため、自社で液化水素実験を行える液化水素実験棟を浜松研究所内に建設することとした。
同施設は2026年3月に完成予定であり、実験棟の完成により、液化水素向け関連製品・サービスの開発スピードを上げ、市場に有望な製品の開発を行うとしている。
◆半導体材料:富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズが静岡工場内に先端半導体材料の新棟を竣工(11月25日)
富士フイルムは、半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズの静岡工場内に建設していた開発・評価用の新棟が竣工し、11月より稼働を開始したことを発表した。
静岡工場の新棟では、高い清浄度のクリーンルームに先端評価機器を設置し、開発・生産のための品質評価機能を強化する。また、半導体材料に含まれる微粒子を検査する工程にAI画像認識技術を導入しその分析精度を向上させるなど、AIを活用した高度な品質管理体制を構築する。さらにDXを推進する部門を新棟に配置し、製造工程におけるAIなどのデジタル技術の活用拡大を支援することにより、製品の品質向上と安定供給を実現する。
本投資を通じて、開発品の性能評価や製品の品質評価を行う体制を拡充することで、EUVリソグラフィ用レジストなどの先端レジスト、PFASフリー材料やカラーフィルターを製造するための着色感光材料などの先端・次世代半導体向け新規材料の開発加速や、高品質な製品のさらなる安定供給を実現する。急速に拡大するAIデータセンター向け半導体などの需要増に対応することで、半導体材料事業の成長をさらに加速させるとしている。
◆導電性ポリマー:デンカが次世代エレクトロニクス分野の事業拡大に向けてスタートアップへ出資(11月25日)
デンカは、コーポレート・ベンチャー・キャピタルファンドを通じて、導電性ポリマー「PEDOT/PSS」の開発・製造・販売を手がけるスタートアップ企業「クレバ」へ出資することを決定したことを発表した。
PEDOT/PSSは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン) / ポリスチレンスルホン酸)からなる優れた電気伝導性・透明性・柔軟性を持つ導電性ポリマーである。コンデンサ用途に加え、近年の次世代ディスプレイやフレキシブルデバイスの需要拡大を受け、タッチパネルや有機EL、ペロブスカイト太陽電池等、次世代の産業インフラを支える素材として期待されている。
クレバは、独自の製法とノウハウを活かした導電性ポリマー「PEDOT/PSS」の原液製造から配合液の開発までを一貫して行う国内唯一の企業であり、同分野において垂直統合型の生産体制を確立している。デンカは、今回の出資を通じて、高性能の導電性ポリマーの共同開発、新規用途への展開、製造プロセスの構築等を目指すとしている。
◆価格改定
・東洋インキが油性オフセットインキ・UVインキを2026年1月1日出荷分より値上げ
値上げ対象製品は、オフセット輪転インキ、オフセット枚葉インキ、オフセット新聞インキ、UVインキ。値上げ幅は、10%以上。