2025.12.18 発行
◆電子材料:ノリタケがAI時代を支えるTGV用銀ペーストを開発(12月11日)
◆電子材料:東レが半導体・電子部品工程に用いる高制電ABS樹脂を開発(12月11日)
◆フッ素:AGCがリサイクルされた蛍石を使ったフッ素樹脂PTFEのUL2809第三者検証完了を発表(12月10日)
◆AR/VR:三井化学がARグラス向けの光学樹脂ウェハを開発(12月10日)
◆電子材料:DNPが最先端半導体向けに回路線幅10nmのナノインプリント用テンプレートを開発(12月9日)
◆バイオ:出光興産が海洋性紅色光合成細菌の大量培養技術の確立に向けたベンチプラントを西部石油敷地内に新設
(12月9日)
◆電子材料:アキレスが貫通孔付きガラス基板への高密着めっき膜形成技術を開発(12月8日)
◆電池リサイクル:東レが車載用リチウムイオン電池向けリチウム高純度回収技術を確立(12月8日)
◆事業再編:クラレが中国におけるメタクリル樹脂シート生産子会社の事業を譲渡(12月8日)
◆価格改定
・東亞合成が次亜塩素案ソーダを2026年1月15日出荷分より値上げ
◆電子材料:ノリタケがAI時代を支えるTGV用銀ペーストを開発(12月11日)
ノリタケは、3D実装された半導体パッケージ内の基板に貫通する配線を形成するThrough Glass Via(TGV)用銀ペーストを開発したことを発表した。
AIサーバーは、膨大な演算処理による大量の電力消費といった課題から、薄型化し3Dなどの積層化された先端半導体パッケージの必要性が高まっている。3D実装では、半導体チップとプリント基板の間にコア基板を配置し、貫通ビアを開け配線するが、この半導体の動作時に熱が発生し、従来の樹脂基板では反りなどを引き起こす可能性があるため、コア基板に耐熱性の高いガラスを用いる開発が進められている。ガラス基板の貫通ビアに配線を形成するTGVを実用化する方法として、銅でのめっき技術が有力視されているが、作業時間が長いことや、ビアにクラックが発生しやすいことが課題である。
開発品は、銀の粒子の量を最大限に増やすことで、従来の銅めっき技術と同等の抵抗値のまま、配線工程の効率を大幅に向上させた。銀ペーストを貫通ビアに充填し、焼結させることで配線を形成するため、作業時間を短縮した。また、半導体の動作時の温度変化に耐えうる組成と粒子分散技術により、クラックの発生を抑制した。
開発品を用いた配線により、ガラス基板の普及を促進し、先端半導体パッケージの高速処理化や消費電力の低減を実現することで、AIの普及・拡大に貢献するとしている。
◆電子材料:東レが半導体・電子部品工程に用いる高制電ABS樹脂を開発(12月11日)
東レは、ABS樹脂の帯電防止性能を大幅に向上させ、同社の従来材比1/5となる表面抵抗率10⁹Ω/sqの高制電ABS樹脂「トヨラックパレル」を開発したと発表した。
本開発品を半導体や電子機器の製造現場で使用される搬送資材に適用することで、微細な静電気の発生を抑制し、異物やホコリによる製品破損や不良品の発生リスクを低減する。
近年の半導体市場では、製品の微細化・高集積化を背景に、搬送資材にも従来以上の帯電防止性能が要求されている。また、工程内では内容物が確認できる透明ケースや、良外観性、カラーバリエーション対応が求められている。従来の導電性フィラーを配合した制電ABS樹脂では、帯電防止効果の持続性や外観面に制約があり、新素材へのニーズが高まっていた。
今回の開発材は、制電ポリマーの分子構造設計改良と独自のポリマーアロイ技術により、ABS樹脂中にミクロ単位での連続層ネットワークを形成し、高い制電性を実現した。これにより、「トヨラックパレル」の高制電タイプとしてラインナップを拡充した。2026年度から顧客向けサンプルワークを開始し、今後、さらなる研究開発を進めるとしている。
◆フッ素:AGCがリサイクルされた蛍石を使ったフッ素樹脂PTFEのUL2809第三者検証完了を発表(12月10日)
AGCは、廃棄物からリサイクルされた蛍石を原料として製造したフッ素樹脂「Fluon PTFE(Gグレード)」がUL2809に基づく第三者検証を2025年11月に完了したと発表した。
UL2809は、ISO14021に基づくリサイクル材使用比率の自己宣言に対する第三者検証方法を定めた国際規格であり、フッ素樹脂PTFEで同規格の検証を完了した事例は世界初となる。
フッ素製品は、半導体や輸送機器など幅広い産業で不可欠であるが、出発原料である天然蛍石の埋蔵量には限りがある。これまで、廃棄物から回収されたリサイクル蛍石の多くは、高純度化が難しく、製鉄用融材や道路路盤材の副原料など、付加価値の低い用途に限られてきた。
こうした中、同社は独自の技術的知見を活かし、自社工場廃棄物からリサイクルされた蛍石の品質向上に成功し、フッ素製品原料としての活用を進めている。今後は他社工場の廃棄物からリサイクルされた蛍石を、自社フッ素製品に再利用する取り組みも進めていくとしている。
◆AR/VR:三井化学がARグラス向けの光学樹脂ウェハを開発(12月10日)
三井化学が世界初となる屈折率1.67および1.74で12インチサイズのARグラス向け光学樹脂ウェハ「Diffrar(ディフラ)」の開発に成功したことを発表した。
光学樹脂ウェハDiffrarは、1.67以上の高屈折率、高平坦性など優れた光学特性を備え、ARグラスユーザーへ広い視野角を提供する。加えて、樹脂製のためデバイスの安全性(耐衝撃性)や軽量化にも寄与し、ユーザーの快適な長時間使用を可能にする。
屈折率としては1.67、1.74の2種類、ウェハサイズとしては6インチ、8インチ、12インチのラインナップを揃え、ARデバイスのモジュール製造工程に関して様々な選択肢の提供を実現するとしている。
◆電子材料:DNPが最先端半導体向けに回路線幅10nmのナノインプリント用テンプレートを開発(12月9日)
DNPは、半導体の回路パターンの形成に使用するナノインプリントリソグラフィ(以下、NIL)向けに、1.4ナノメートル世代相当のロジック半導体にも対応可能な、回路線幅10nmのテンプレート(型)を開発したと発表した。
先端半導体ではEUVリソグラフィが普及する一方、生産ライン構築や露光工程におけるコストや電力消費が必要となる為、製造コスト削減と環境負荷低減の両立が課題となっている。DNPは2003年から、回路パターンを刻んだテンプレートを基板に直接圧着して転写することで、露光工程の電力消費を抑制できるNIL用テンプレートの開発を進め、独自のノウハウを蓄積してきた。
今回は、EUVリソグラフィの一部工程の代替やEUV設備を持たない顧客のニーズに対応するため、ダブルパターニングを活用してNILテンプレートの微細化を実現し、先端領域のロジック半導体の製造を可能にする回路線幅10nmのNIL用テンプレートを開発した。これにより、露光工程の電力消費量を従来比約10分の1に抑制することができる。
DNPは2027年の量産開始を目指し評価を進めるとともに、2030年度にNILで40億円の売上増加を目指すとしている。
◆バイオ:出光興産が海洋性紅色光合成細菌の大量培養技術の確立に向けたベンチプラントを西部石油敷地内に新設(12月9日)
出光興産は、同社100%子会社の西部石油の敷地内に、海洋性紅色光合成細菌の大量培養技術の確立に向けたベンチプラントを新設したことを発表した。
同社は、微生物開発に豊富な知見を持つ京都大学発のスタートアップ Symbiobeと、本ベンチプラントにて海洋性紅色光合成細菌の大量培養と海洋性紅色光合成細菌が貯留する有用物質を用いたグリーンバイオ資材の製造効率化に関する実証を行う。また、ベンチプラントの運転に必要となる電力のコスト抑制とグリーン化についての検証も併せて実施する。
ベンチプラントにおけるグリーンバイオ資材の製造規模は年間1トンで、実証運転は 2026年2月に開始する予定である。同社は、実証での成果を踏まえて段階的なスケールアップを行い、2030年までに商業プラント運転開始および事業化を目指すとしている。
◆電子材料:アキレスが貫通孔付きガラス基板への高密着めっき膜形成技術を開発(12月8日)
アキレスは、導電性高分子であるポリピロールを用いた独自のめっき法により、貫通孔付きガラス基板への高密着めっき膜形成を可能にする新技術を開発したと発表した。
従来、ガラス基板へのめっきで高密着性を得るには300℃以上の高温処理が必要とされてきたが、同技術は低温・常圧プロセスで高い密着性を実現できる点が特長となる。
同社は2024年にガラス基板への高密着めっき膜形成技術を開発しており、半導体パッケージ基板向け材料として注目が高まる中、貫通孔付き基板への対応ニーズが増加していた。今回、塗料の粘度や塗工方式など研究を重ね、貫孔内部へのめっき形成にも対応し、次世代半導体の高密度化や小型化に寄与
する技術を開発した。
今後は半導体関連企業と連携し、微細配線形成技術や量産技術の研究開発を進め、製造分野での利用拡大を図るとしている。
◆電池リサイクル:東レが車載用リチウムイオン電池向けリチウム高純度回収技術を確立(12月8日)
東レは、車載用リチウムイオン電池のリサイクルにおいて、従来は廃棄されていたリチウムを高純度・高収率で回収可能な新開発の高耐久・高選択ナノろ過(NF)膜エレメントを実用サイズにスケールアップする技術を確立したことを発表した。
EVなど電動車の普及・拡大が進む中、リチウムイオン電池の安定供給に向けたレアメタル資源の確保、とりわけ使用済みリチウムイオン電池のリサイクルによるリチウム資源の循環確立は、重要な課題となっている。また近年、ニッケルやコバルトを含まないLFP(リン酸鉄リチウム)系電池の急速な普及に伴い、リチウム単体の回収ニーズが高まっている。
東レは、使用済みリチウムイオン電池を加熱処理して得られたブラックマスの硫酸浸出液に対し、耐酸性を飛躍的に向上させたNF膜を用いてろ過処理を行うことで、リチウムを選択的に分離・回収する技術を開発し、その実証で95%以上の回収率を確認している。
現在は実用スケールでのリサイクルプロセスへの適用および顧客へのサンプル提供が可能であり、今後は、早期の市場投入と社会実装の加速を目指すとしている。
◆事業再編:クラレが中国におけるメタクリル樹脂シート生産子会社の事業を譲渡(12月8日)
クラレは中国の連結子会社である可楽麗亜克力(張家港)について、同社が保有する全株式を江蘇双象集団に譲渡することを発表した。
可楽麗亜克力(張家港)は、中国市場でメタクリル樹脂キャストシート事業を展開し、高級ブランドのアクリル浴槽用途を中心に拡大してきた。しかし、中国不動産市場の低迷により主力用途であるアクリル浴槽向けの販売が減少し、近年収益性が低下している。
同社は中期経営計画を基に事業ポートフォリオの高度化を進めており、これまでにもメタクリル酸メチルの生産能力削減などを実施してきた。今回の譲渡については、これまで蓄積してきた技術を生かしつつキャストシート事業をさらに発展させることができるよう、中国最大級のMMA生産規模を有する江蘇双象集団に譲渡することとした。
譲渡時期は、2026年2月中旬~3月上旬を予定している。なお、同社が日本市場で販売する〈パラグラス〉については、同工場で生産された製品の供給を継続することで合意したとしている。
◆価格改定
・東亞合成が次亜塩素案ソーダを2026年1月15日出荷分より値上げ
対象品目は、次亜塩素酸ソーダ、ツルクロン、アロンクリン
値上げ幅は、ローリー:12円/㎏、包装品:25円/㎏