2025.10.09 発行
◆水処理膜:東洋紡エムシーが中空糸型RO膜の紡糸設備の増設と自動機導入で生産能力を増強(10月3日)
◆電子材料:ダイセルが誘電正接0.001未満を実現する世界最高水準の低誘電特性材料を発見(10月2日)
◆再生医療:ZACROS、クラレ、サイフューズ、千代田化工建設の4社が再生医療の産業化・社会実装に向けた協創を発表
(10月1日)
◆医薬品:帝人が豪セル・セラピーズとアジア太平洋地域における細胞・遺伝子治療CDMO事業で業務提携(10月1日)
◆コーティング剤:サカタインクスがハンバーガーなど食品包装紙用途に向けてPFASフリー耐油剤と紙用耐屈曲水性コーティ
ング剤の販売を開始(10月1日)
◆非鉄金属:三井金属が2025年度下期の地金生産計画を発表(10月1日)
◆非鉄金属:三菱マテリアルが2025年度下期の地金生産計画を発表(10月1日)
◆リサイクル:三井化学と太陽石油はケミカルリサイクル製品の供給拡大に向けた協業検討を開始(9月30日)
◆電子材料:富士フイルムが先端パッケージング向けCMPスラリーの販売を開始(9月29日)
◆価格改定
・ENEOSがベンゼンの10月の契約価格を改定
・DICグラフィックス社がオフセット用印刷インキを12月1日出荷分より値上げ
◆水処理膜:東洋紡エムシーが中空糸型RO膜の紡糸設備の増設と自動機導入で生産能力を増強(10月3日)
東洋紡エムシーは、同社岩国サイト(山口県)の岩国環境・ファイバー工場に、新たに中空糸型RO膜「ホロセップ」の製造設備を増設することを決定したことを発表した。
同品は、主に中東地域の海水淡水化プラントで採用されてきた。中東地域の海水は高水温かつ閉鎖海域のため微生物が発生しやすく、その結果、RO膜に目詰まりが発生しやすいという課題がある。同品は三酢酸セルロース(CTA)製で耐塩素性があるため運転中の塩素殺菌が可能であり、また膜の表面積も大きいため、微生物の増殖や目詰まりを抑制できる特長がある。
今回、紡糸ラインを増設するほか、組立工程では複数の工程に自動化設備を導入し、生産の省力化、効率化を図る。増設により、同工場における中空糸型RO膜「ホロセップ」の生産能力は現行の3倍となる。併せて、製塩・リチウム回収向けの中空糸型BC膜「ホロセップ」の生産設備も増強し、BC膜の生産能力は2倍に増加する。
総投資額は約10億円で2026年夏頃の稼働開始を予定している。同社では生産・供給体制を強化することで、現地の旺盛な需要に応えていくとしている。
◆電子材料:ダイセルが誘電正接0.001未満を実現する世界最高水準の低誘電特性材料を発見(10月2日)
ダイセルは、早稲田大学理工学術院の研究グループと共同で、誘電正接0.001未満という極めて低い損失特性を持つ新規低誘電特性材料の開発に成功したことを発表した。
近年、IoTやAIの急速な発展に伴い、多量のデータを高速かつ高品質に伝送する技術への需要が一層高まっている。しかし、情報通信機器の回路基板に用いられる電気絶縁材料 (低誘電特性高分子材料) は、回路基板に流れる周波数が高くなるとともに伝送損失の増加を引き起こし、発熱によるエネルギー損失や品質劣化を招く課題を抱えている。この課題解決のために、誘電正接の低い材料が必要となっている。
本研究ではポリフェニレンスルフィド(PPS) 誘導体という構造に着目し、高周波電気信号への応答性を大幅に抑制することで、従来材料を凌駕する世界最高水準の低誘電特性を実現した。本材料は、0.001未満の誘電正接を実現しており、第6世代移動通信システム(6G)の実現に向けた高速・大容量・低遅延通信を支える回路基板材料として、また、AIサーバーなどの高速信号処理が求められる電子機器への応用が期待されるとしている。
◆再生医療:ZACROS、クラレ、サイフューズ、千代田化工建設の4社が再生医療の産業化・社会実装に向けた協創を発表(10月1日)
ZACROS、クラレ、サイフューズ、千代田化工建設は、再生医療の産業化および社会実装に向けた新たな共創「細胞の挙動を解析・予測する新規シミュレーションソフトを駆使した効率的な大量培養プロセス構築法の確立およびプラットフォーム化に関する共同開発」を発表した。
本取り組みでは細胞大量培養の主軸である3D培養法に着目し、4社がそれぞれの要素技術を融合させる。具体的には、サイフューズが開発を進める再生医療等製品のパイプラインに用いられるヒト細胞を対象に、ZACROSの培養装置技術、クラレのマイクロキャリア技術、千代田化工建設の分析評価技術および CFD・AI技術を組み合わせ、ラボスケールでの培養状態を、実際の細胞解析データ、CFDによる流体可視化技術、さらにAI解析を組み合わせてデジタルツイン化することで、商業規模での細胞培養状態を正確に把握し、培養結果を予測可能とするシミュレーションソフトを駆使した大量培養プロセス開発に共同で取り組む。
4社の技術連携により、再生医療や創薬分野における新たな知見の獲得とともに、ヒト細胞大量培養プロセス開発の効率化を進め、再生医療等製品および創薬支援ツールの開発に反映していく計画としている。
◆医薬品:帝人が豪セル・セラピーズとアジア太平洋地域における細胞・遺伝子治療CDMO事業で業務提携(10月1日)
帝人は、豪セル・セラピーズと日本を含むアジア太平洋地域における細胞・遺伝子治療CDMO事業に関する業務提携の合意書を締結したと発表した。
再生医療領域におけるCDMOの需要は、再生医療等製品の開発難易度の高度化や製造開発機能の分業化などを背景として急速に拡大しており、世界の市場規模は2032年には186億米ドルを超えると予測されている。
今回の合意に基づき、帝人のグループ会社のリジェネットとセル・セラピーズは、アジア太平洋地域における細胞・遺伝子治療の開発や製造に関するインフラ構築を目指して協業する。また、両社がそれぞれ保有する「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準(GMP)」 に準拠した製造施設を相互に活用し、技術移管を通じて製造能力の拡充を図る。
今後、帝人とセル・セラピーズは、今回の業務提携を基に、アジア太平洋地域における革新的な細胞・遺伝子治療法を社会実装に向けたインフラ構築を目指し、より強固な協力体制の構築を推進していく。帝人グループは、再生医療事業における2030年度の売上高目標200億円の達成に向けて、国内外からの開発・製造委託需要の取り込みを図り、設備の拡充や人材育成などの事業基盤の強化と、国内外企業との提携を進めていくとしている。
◆コーティング剤:サカタインクスがハンバーガーなど食品包装紙用途に向けてPFASフリー耐油剤と紙用耐屈曲水性コーティング剤の販売を開始(10月1日)
サカタインクスは、改正食品衛生法ポジティブリスト(PL)などの食品接触に対応している原材料を使用した、PFAS(有機フッ素化合物)フリー耐油剤と紙用耐屈曲剤の販売を開始することを発表した。
従来の紙用耐油剤が塗工された包装紙では、食品を包装加工する際に、紙の折れ目部分で耐油剤の「割れ」が発生してしまい、その部分から食品に含まれる水分や蒸気、油分が紙へ浸透してしまうことで、包装紙の性能を著しく低下させていた。
同社では、包装加工時の耐油剤の「割れ」を大幅に低減する水性タイプの耐屈曲剤 『DHX2-4006(海外法規制対応品)/DHX2-4007(国内法規制対応品)』 を開発・上市した。また今回、耐屈曲剤と同時に上市するPFASフリー耐油剤は、PFASを使用しておらず、改正食品衛生法ポジティブリスト(PL)に収載された物質のみを使用している。
同社は、食品パッケージの業界において、これらの塗工剤の普及を通して、紙パッケージの安心・安全かつ、用途の拡大に向けた、さらなる可能性を追求していくとしている。
◆非鉄金属:三井金属が2025年度下期の地金生産計画を発表(10月1日)
三井金属は、2025年度下期における地金生産計画を発表した。
2025年度下期の生産計画としては、亜鉛は106.5千t/期(前年同期:114.0千t/期)、鉛は34.6千t/期(前年同期:35.8千t/期)、金は0.7t/期(前年同期: 2.3t/期)、銀は64.2t/期(前年同期:75.0t/期)の生産予定としている。
なお、2024年度下期と比較して亜鉛および鉛が減少しているが、その理由は、2025年下期に大規模定期修繕を実施予定しているためである。 また、金および銀の減少理由は、原料品位の差によるものとしている。
◆非鉄金属:三菱マテリアルが2025年度下期の地金生産計画を発表(10月1日)
三菱マテリアルは2025年下期における地金生産計画を発表した。
2025年度下期の生産計画としては、銅は30,701t/月(前年同期:30,643t/月)、鉛は2,333t/月(前年同期:2,304t/月)、金は1,642kg/月(3,448kg/月)、銀は18,250kg/月(前年同期:25,339kg/月)の生産を計画している。
前年同期実績との比較では、銅について、直島製錬所は定修の予定がなく約25%増となる予定である。一方、小名浜製錬所は銅精鉱処理縮小により約25%減となり、全体では前年並みとなる計画である。
また、金および銀の生産減については、Gresikスライムの受入れ見込みがないこと、および小名浜製錬所における銅精鉱処理縮小による原料受入量減によるものとしている。
◆リサイクル:三井化学と太陽石油はケミカルリサイクル製品の供給拡大に向けた協業検討を開始(9月30日)
三井化学と太陽石油は、サーキュラーエコノミーの実現に向けた協業について検討を開始したことを発表した。
太陽石油は、廃プラスチック分解油等の受入設備建設工事を進めており、製油所設備を活用したケミカルリサイクル開始に向けた準備を進めている。
三井化学は、2021年12月より、バイオマスナフサを同社大阪工場のクラッカーに投入し、マスバランス方式によるプラスチック・化学品の製造・販売を開始している。また2024年3月からは、廃プラスチックを原料とする熱分解油もクラッカーに投入し、マスバランス方式によるケミカルリサイクル由来の誘導品の製造・販売を開始している。
本検討では、上記の取り組みを進めてきた両社の協力を通じて、ケミカルリサイクル製品の供給拡大を目指す。具体的には、三井化学のクラッカーでは処理困難な廃プラ分解油の一部(重質分)を太陽石油が処理し、三井化学にマスバランス方式によるケミカルリサイクル由来のナフサやプロピレン等を提供する。また、使用可能な廃プラスチック原料の拡大にも取り組む。加えて、バイオマス製品の供給拡大に関しても協業の可能性を検討していくとしている。
◆電子材料:富士フイルムが先端パッケージング向けCMPスラリーの販売を開始(9月29日)
富士フイルムは、複数の半導体チップを1つのパッケージに実装する先端パッケージング技術向け研磨剤「CMPスラリー」の販売を開始したことを発表した。
CMPスラリーはウエハー表面を平坦化する工程で使用される研磨剤であり、半導体デバイスの微細化・積層化の進展に伴い、ウエハーのさらなる平坦化が求められるなど、製造工程の中で必要不可欠な役割を担っている。CMPスラリーは、主に半導体の前工程で用いられているが、近年は複数の半導体チップを接合する先端パッケージング工程でも使用されるケースが増加している。
今回、同社は前工程向け銅配線用CMPスラリーを先端パッケージング向けに進化させた新製品の販売を開始した。銅と酸化膜が混在するハイブリッドボンディングの接合面を高い精度で平坦化するために、添加剤・防食剤・砥粒などの処方を最適化した。
今後は再配線層やマイクロバンプなど様々な先端パッケージング材料向けに本製品を展開しいていく。また、最先端半導体製造の前工程向けCMPスラリーでもさらなる技術開発を進め、半導体の微細化に貢献するとしている。
◆価格改定
・ENEOSがベンゼンの10月の契約価格を改定
10月契約価格は、735$/t(前月比▲25$/t)
国内価格換算想定値は114.8円/kg
・DICグラフィックス社がオフセット用印刷インキを12月1日出荷分より値上げ
値上げ幅は、商業オフ輪インキ、油性枚葉インキ、新聞インキ:10%以上
UVインキ:カラー5%以上、墨10%以上
特練りインキ(全用途):20%以上