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2025年10月23日

2025.10.23 発行

HEADLINE

◆顔料:三菱マテリアルが新無機黒色顔料『NITRBLACK UB-3』を開発(10月17日)
◆フィルム:東洋紡が高透過・低屈折率のポリ乳酸フィルムを新開発、9月よりサンプル提供を開始(10月17日)
◆低摩耗材:出光興産が潤滑剤とPEEKコーティングを組み合わせた世界初の低摩擦ソリューションの事業化に向け基本合意書
 を締結(10月16日)
◆バイオ関連:JSRがバイオプロセス材料事業の譲渡を発表(10月15日)
◆電子材料:レゾナックが曲げ強度従来比1.4倍のインダクタ用磁性封止材を開発(10月15日)
◆排水処理:三菱ケミカルが広島事業所において排水処理パイロット設備を竣工(10月14日)
◆研究開発:東洋紡エムシーが共重合ポリエステル樹脂「バイロン」の新研究棟建設を開始(10月14日)
  
  

WEEKLY NEWS

◆顔料:三菱マテリアルが新無機黒色顔料『NITRBLACK UB-3』を開発(10月17日)
 三菱マテリアルおよび三菱マテリアル電子化成は、透過型黒色顔料「NITRBLACK(ナイトブラック)UB-2」の光学性能を大幅に向上させ、UVの透過率を従来同等に保ちつつ、可視光域の遮光率を従来比1.5倍以上へ向上させた「NITRBLACK UB-3」を開発したことを発表した。
 従来の黒色顔料(例:カーボンブラックやチタンブラック)を用いた遮光材では、可視光域のみならず、光硬化に必要なUV域の光も吸収してしまうため、光硬化のみでは十分な黒色度を得ることが困難であり、光硬化後に熱硬化処理が必要となる課題があった。本製品を用いることにより、光硬化のためのUV照射時間を従来比で半分以下(同社試験結果)に短縮することが可能となり、より厚膜で高黒色度な光硬化が実現可能となる。なお、提供形態は溶剤または低粘度モノマーの分散体で提供する。
 本製品は今後さらなる高性能化が進むディスプレイや光学式センサー向けなどでの利用拡大が期待されるほか、遮光性を有する接着剤など、幅広い用途への展開も見込まれている。UV照射時間が大幅に短縮できることにより、製造工程における作業時間の短縮、エネルギー効率の向上や温室効果ガスの削減への貢献にも寄与するとしている。

◆フィルム:東洋紡が高透過・低屈折率のポリ乳酸フィルムを新開発、9月よりサンプル提供を開始(10月17日)
 東洋紡は、100%植物由来のポリ乳酸樹脂を原料とする光学フィルムの試作品を新たに開発し、2025年9月よりサンプル提供を開始したことを発表した。
 ポリ乳酸は、植物から得られるでんぷんや糖類を原料として製造される100%バイオマス由来の樹脂で、紫外線・可視光線・赤外線といった広範な波長域の光を透過する優れた透明性や、フッ素樹脂に次ぐ低屈折率などの光学特性を持つ。こうした特性を活かし、半導体やディスプレイの製造工程における光学的な検査・処理用途への展開が期待されている。
 一方、こうした工業用途で使用するには、耐熱性や機械強度、加工時の寸法安定性などが求められる。加えて、ポリ乳酸特有の光学性能を安定して発現させるため、透明性や屈折率に影響を与える結晶化や分子配向を精密に制御する高度な加工技術が必要とされる。
 これらの課題に対し、同社は、独自の二軸延伸加工技術と、フィルム内部に粒子を含まない構造設計技術を活用することで、工業用途に必要な耐熱性や機械強度と、光学用途で求められる優れた透明性・低屈折率を両立させたポリ乳酸フィルムを新たに開発、サンプル提供を開始した。
 今後、新開発のポリ乳酸フィルムを本格的に販売推進し、工業用フィルム製品ラインアップのさらなる拡充を図っていくとしている。

◆低摩耗材:出光興産が潤滑剤とPEEKコーティングを組み合わせた世界初の低摩擦ソリューションの事業化に向け基本合意書を締結(10月16日)
 出光興産は、コーティング技術に強みを持つ韓国のZenith Corporation(以下、ゼニス社)と、その日本総代理店であるグローバルコードの3社で、出光興産の潤滑剤と、ゼニス社の PEEKを用いたコーティング(以下、PEEKコーティング) を組み合わせた世界初の低摩擦ソリューションの事業化に向け、基本合意書を締結したと発表した。
 コーティング素材として広く使われてきたテフロンは、廃棄後も土壌や水中に長期間残留するため、環境への影響が懸念されている。同社は、その代替素材として、非PFASで耐熱性、耐摩耗性に優れた高機能プラスチック「PEEK」に着目した。しかし、PEEKは基材への密着が難しいことから、コーティングとしての利用は限定的だった。
 同社は、この課題に対し基材の表面に微細な凹凸を形成するアンカー構造を用いて高い密着性を実現するゼニス社の技術を採用した。また、PEEKの特長を最大限発揮させる高機能潤滑剤を開発した。これにより自動車や産業機械などの工業分野において、潤滑剤とPEEKコーティングを併用することで、更なる低摩擦化を実現していく。同社は、2035年までに事業規模100億円の達成を目指し本事業の拡大を進めていくとしている。

◆バイオ関連:JSRがバイオプロセス材料事業の譲渡を発表(10月15日)
 JSRはバイオプロセス材料事業をMerck(以下、メルク)へ譲渡する契約を締結したことを発表した。
 JSRのバイオプロセス材料事業は、現在ベルギーを主要拠点とし、世界中の製薬メーカーやバイオテクノロジーメーカーにクロマトグラフィーソリューションを提供している。
 メルクのライフサイエンス事業は、高度なろ過技術、クロマトグラフィー用樹脂、緩衝液および化学薬品、ハードウェアおよびシステム、統合技術、検証サービスなどを提供している。これらにより、顧客はスピード、安全性、信頼性を向上させ、医薬品開発および製造を効率化することができる。
 JSRはこの事業譲渡により、今後パートナーや顧客にとって最大の価値をもたらす影響力の大きい分野にリソースを集中させることが可能となる。この事業譲渡は2026年第2四半期末までに完了する予定としている。

◆電子材料:レゾナックが曲げ強度従来比1.4倍のインダクタ用磁性封止材を開発(10月15日)
 レゾナックは、曲げ強度が自社従来品と比較して1.4倍に向上した磁性封止材を開発したことを発表した。
 本製品は、インダクタ用の材料で、衝撃や湿度などによるインダクタの機能低下を抑制し、機器の信頼性向上に貢献する。本開発品は、2026年の量産開始を予定している
 近年、AI、5G、ADASなどの技術が普及、拡大し、あらゆる機器において、信号のノイズ除去や電圧の制御など、より複雑な機能が求められている。これに伴い、機器に搭載されるインダクタに対する性能要求も高まっている。
 電源回路に用いられるインダクタには、巻き線インダクタが使われている。巻き線インダクタは、巻き線を樹脂と磁性粉から構成される磁性封止材で成型するが、樹脂と磁性粉の界面において強度が保てず、実装後、外力が加わった際に磁性封止材が破壊するなど、信頼性の課題が指摘されている。そのため、磁性封止材に対しては、樹脂と磁性粉の接合強度の向上が求められている。
 同社は、樹脂と磁性粉の接合強度を高めるため、カップリング剤(添加剤)の選定に自社の量子化学計算技術を活用した。磁性粉のコーティングと樹脂の接合反応を解析し、最適なカップリング剤を探索することで、従来の3分の1の期間で開発を完了した。本製品の開発で活用した技術は、金属の種類にかかわらず、金属と樹脂が接合する複合体への展開が期待されるとしている。

◆排水処理:三菱ケミカルが広島事業所において排水処理パイロット設備を竣工(10月14日)
 三菱ケミカルは、広島事業所において、ケミカルプラントの排水水質改善に向けた高度な排水処理技術を確立するためのパイロット設備を竣工したことを発表した。
 同社は、ケミカルプラントからの排水中のCOD(化学的酸素要求量)削減に取り組んできた。今回竣工した排水処理パイロット設備の主な機能は、①連続運転・バッチ運転での試験、②排水の組成、温度、pHの変動による多変数の試験、③排水処理技術を組み合わせた試験(生物処理、膜分離、促進酸化法他)である。
 同社は、生産技術や研究部門で高度化してきた幅広いソリューションを組み合わせることで、コスト競争力のある高度な排水処理技術の確立を目指す。また、この技術を国内外の拠点に水平展開することで2029年度COD削減目標(2023年度比で-310t)の達成を図るとともに、中長期的に水処理ビジネスとしての事業化も検討するとしている。

◆研究開発:東洋紡エムシーが共重合ポリエステル樹脂「バイロン」の新研究棟建設を開始(10月14日)
 東洋紡エムシーは、滋賀県大津市の堅田サイトにおいて、共重合ポリエステル樹脂「バイロン」をはじめとする機能樹脂製品の研究開発拠点となる新研究棟の建設を開始したことを発表した。
 バイロンは、耐熱性・接着性・柔軟性に優れた共重合ポリエステル樹脂であり、フレキシブルプリント配線板用接着剤や塗料、コーティング剤、低圧封止材「バイロショット」などに使用されている。今後も電子材料分野での用途拡大が見込まれることから、製品開発力の強化を目的として研究棟を新設するものである。
 新研究棟には、社内外の共同研究を推進する「共同実験スペース」を設置し、オープンイノベーションによる技術革新を加速させる。竣工は2026年8月の予定としている。

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